2015年1月22日木曜日

「料理人なら知っておくべき“塩味”のコト 第3回(全4回)」

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 塩味をおいしいと感じられる許容範囲は他の調味料にくらべるとたいへん狭く、薄すぎると美味しくなく、濃すぎると食べられないほどに感じます。



一般に、体液の塩分濃度0.9%と同じ程度の塩分濃度が調理の基本とされており、お吸い物や汁物はこの濃度よりやや薄目の味付けします。煮物は塩分比率が高くなりますが、これはご飯と一緒に食べることを前提に調理するからで、実際、ご飯と一緒に食べると塩味は薄められてちょうどよい味付けになります。

また、塩は味付けだけでなく、他の味とのバランスでさまざまな効果を発揮します。たとえば、おしるこに少量の塩を加えると却って甘さが引き立っておいしくなる、コンブやかつお節で出汁をとるとき塩を少量加えると旨みが増す、などです。

このように旨みや風味などを強調させる作用を「対比効果」といいます。

さらに。

寿司酢には塩を加えますが、これは塩によって酢の酸味が抑えられるからです。「塩梅(あんばい)がよい」という言葉がありますが、これも塩によって梅干しの酸味がちょうどよくなったことをあらわしています。

 このように塩によって酸味が抑えられることを「抑制効果」といいます。





 調理の順序は「サシスセソ」とよく言われます。

サは砂糖、シは塩で、これは塩のほうが砂糖よりも浸透速度が早いため、味のしみこみにくい砂糖が先、という意味です。

炒め物などでは、塩には野菜などの水分を吸い出す脱水作用があるので、水っぽくならないように最後に塩を加えます。

塩は味付けだけでなく、細菌の繁殖を抑え保存性を向上させる働きをはじめ、多彩な働きがあります。

食品の物性を変化させる働きもあり、たとえばカリフラワーやジャガイモを茹でる際に塩を入れると、野菜類の細胞膜を強固にしているペクチン酸カルシウムのカルシウムが塩のナトリウムと置換され、細胞が柔軟になるので、柔らかくゆでるこことができます。

かまぼこなどの練り製品では、塩のタンパク質溶解作用が利用され、アシと呼ばれる歯ごたえを生み出しています。粘りのあるパン生地やうどんづくりにも塩が活躍しています。 
 
魚や肉に塩をかけて焼くとたんぱく質の凝固を早め、旨み成分が外に流れ出てしまうのを防ぎます。里芋の皮をむいたら塩もみして煮ると粘りが出にくくなるのも凝固作用の一つです。


これらのさまざまな働きによって、塩は調理や食品加工に欠かせない存在となっています。

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