2015年4月28日火曜日

春から学ぼう!“酸味”のコト 第5回(全5回)」

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【まとめ】

人はなぜ、酸っぱさをおいしく感じるのでしょうか。それは、酸味の正体である酢酸やクエン酸などの有機酸が、人体にとってエネルギー代謝を促進する有益なものだから、と考えられます。





 
 有機酸には、摂取した栄養物を効率よく分解する働きがあり、消化・吸収を促進し、栄養物の利用効率を高めてくれます。

 また疲労の原因となる、筋肉内に溜まった乳酸を取り除く作用もあります。気温が高くてエネルギーを消費しやすいときや、激しいスポーツをして疲れたとき、酸っぱいものを欲しくなるのは、このような理由からです。









食欲がないときでも、酸っぱい梅干しやさっぱりした酢の物で食が進みます。

酢には食欲を増進する働きがありますが、それだけでなく、血中コレステロール値を下げ動脈硬化の予防に効果があることや、血圧を下げる、食後の血糖値を下げるなど、健康維持のためにプラスの効用がいくつもあることが報告されています。

また、酢とカルシウムを一緒にとるとカルシウムの吸収率を高めることが報告されているほか、酸味の刺激が緊張を緩和しストレスを和らげる作用を持つともいわれます。

これだけの効果のある酢。
うまく活用して、健康に役立つ食生活をおくりたいものです。


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2015年4月24日金曜日

春から学ぼう!“酸味”のコト 第4回(全5回)」

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 酢には酸味や風味だけでなく、食品の保存性を増したり、変色を防止したり、たんぱく質を固めるといった多くの性質があり、調理の場面でさまざまに活躍をしています。










酢の持つ強い殺菌力は大昔から知られ、古代バビロニアですでに食品を長期保存するためにピクルスが作られていたといわれます。

酢の中では食中毒菌は5分で死滅。2%の酢を添加したおにぎりには8時間の防腐効果が認められるといった研究報告もあります。酢を7~10%加える鮨飯ではさらに保存がきくことになります。


酢の強い抗菌作用は、酸とともに主成分の酢酸の働きが微生物の活動や繁殖を防いでいるといわれます。






魚を酢洗いすると、表面についた細菌の増殖を抑制するとともに、魚の臭み成分であるアミン類に酸が反応して臭みも消えます。魚を煮るとき酢や梅干しを入れるのも生臭さを消すためですが、酢には肉や骨を柔らかくする働きもあります。


コハダやサバなど魚を塩じめしてから酢に浸す「酢じめ」では、魚の肉質に独特の食感が生じます。この「酢じめ」は、たんぱく質が酸によって変性するとともに、酸性酵素がたんぱく質を分解することによるものです。ただ、酢だけでは身くずれしてしまうので、最初の十分な塩じめが欠かせません。










野菜や果物に含まれる物質(ポリフェノールやチロシン)は酵素の働きで酸化し、褐変する性質がありますが、酢でpHを下げれば酵素の働きを抑えることができます。

酢は味としての酸味を楽しむだけでなく、料理の下ごしらえにもさまざまな働きをする優れものの調味料なのです。


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2015年4月21日火曜日

春から学ぼう!“酸味”のコト 第3回(全5回)」

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 味加減のことを「塩梅(あんばい)」といいますが、これは塩味と酸味(梅の酸味)のこと。古来より、酸味と塩味との調和がおいしさの大切な要素だったのです。




酸味と塩味や甘味はお互いの味を和らげる効果があり、調味の隠し味として酸味(酢)は重要な役割を果たします。

実際には砂糖が多量に使われている料理でも酸味が加わることで食べやすくなり、逆に酸味が強い料理に甘味が加わると酸っぱさが和らぎます。

甘酸っぱい料理は、お互いの味の魅力を引き立てあっているのです。また、多くの清涼飲料水では、甘味とともに酸味がつけられ、清涼感を醸し出しています。









 
 酸性の度合いを表すものにペーハー(pH)があります。7が中性、7より小さければ酸性、大きければアルカリ性です。
 

どんな食品にもそれぞれに固有のpHがありますが、一般に、おいしく感じられるのは弱酸性のpHが4~6の間で、pH8になると味がぼやけ、pH3になると酸味を感じるようになるといわれています。


酢のpHは2.5~3.5、レモンやスダチやカボスなど料理に使われる酸味の強い柑橘類の天然果汁もpHは2.5前後と強い酸性です。これらを料理に少量加えることで、料理全体のpHが下がり、驚くほど味がしまって感じられるのです。







 
ところで、食品にはさまざまな色素が含まれていますが、天然色素の多くは酸やアルカリによって色が変化し、食品の見た目に大きな影響をおよぼします。


梅漬けで使うシソの葉は梅酢で真紅になり、ミョウガやショウガを甘酢に漬けておくと美しいピンク色になります。これはアントシアンという色素が、アルカリだと青色、酸性だと赤色になるためです。


ほとんどすべての野菜に含まれるフラボノイドという色素は、アルカリ性では黄褐色、酸性では白色になります。カリフラワーを茹でるときに酢を入れると白く茹でることができます。



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2015年4月17日金曜日

春から学ぼう!“酸味”のコト 第2回(全5回)」

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 酢の主成分には酢酸、そのほかクエン酸やリンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸など多くの有機酸が含まれています。レモンや梅干しの主成分はクエン酸で、これらの有機酸類が独特のすっぱさ、酸味の正体です。












酢に最も多く含まれる酢酸は、酢酸菌によりアルコールが酸化されて生じます。酢は酒の歴史とともに誕生したといわれ、酒の原料になるような糖質を含んだ食品であれば、酢の醸造も可能です。英語のヴィネガー(vinegar)は、フランス語のビネーグル(vinaigre)が語源で、vinはワイン、aigreはすっぱい、つまり「お酒がすっぱくなったもの」という意味なのです。



世界各地にさまざまな酒があるように、それぞれの酒に対応して酢が発達しています。日本では米から作った米酢が一般的ですが、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどワインの産地ではワインビネガーが、ールの本場イギリスやドイツでは麦芽汁から作るモルトビネガー(麦芽酢)が、アメリカではシードルビネガー(りんご酢)が中心です。 

 
日本では近年になって脚光を浴びるようになったバルサミコ酢は、ワインビネガーと同じくぶどうが原料ですが、濃縮果汁を用い数年の樽熟成によって生まれる独特のフルーティな芳香とまろやかな酸味や甘味が特徴です。













どの酢にも共通する主成分の酢酸は、揮発性がありそれ自体に香りがあります。さらに酢の原料となる食品の酢酸以外の有機酸やアミノ酸の含有量の違いにより、できあがった酢自体の風味は大きく異なってきます。それぞれの風味の特徴を生かして、料理によって使い分けられています。

酢は塩や砂糖と同じ基本調味料の1つですが、これらと大きく異なることは、特徴的な豊かな香りがあることです。



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2015年4月14日火曜日

「春から学ぼう!“酸味”のコト 第1回(全5回)」

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 独特の酸味がさわやかな食味を生み出す酢は、その多様な働きから調理の過程でさまざまに活用されていますが、最近ではその健康効果が注目されています。酸味と酸味調味料「酢」が作り出すおいしさの世界を探ってみました.



 伝統的な日本料理の「なます」は魚介類などを刻んで二杯酢などで和えたもの。海外でもすっかりポピュラーな寿司は、魚介類と酢飯との組み合わせです。

長く肉食の習慣のなかった日本では、魚介類が一番のごちそうとして尊ばれました。そのため、魚介類の生臭さを消したり、保存性を増すなどのさまざまな働きを持つ酢が、魚介類の加工や調理の際に経験的に利用されてきたのです。

また、酢は酢味噌や二杯酢、三杯酢、甘酢、土佐酢など、さまざまな合わせ酢にすることよって、淡白な味の日本料理に多様な風味を添えてもいます。








 西洋でも、ヴィネガー(酢)は、スパイスや塩と並んで魚や肉料理に重要な役割を果たしている調味料であり、古くからピクルスなどの保存食に用いられています。また、サラダドレッシングをはじめマヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソースなど、各種ソース類のベースにも使用され、酢の酸味が味にアクセントを与え、保存性を高めてもいます。



洋の東西を問わずに幅広く調理に用いられている酸味調味料の酢ですが、スダチやカボスなどの果実の汁や梅干しの酸味なども多くの料理で利用されています。


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2015年4月12日日曜日

「きちんと学ぶ 味覚の基本 第3回 (全10回)」

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Q.1 甘味と苦味。甘味に関して人は鈍く、苦みに関しては非常に敏感に反応します。さて、甘味と苦味を比較して、苦味に関しては何倍以上低い濃度で感じるでしょうか。   



①5倍
②10倍 
③100倍 
④1000倍




正解④

解説  
甘味より苦味は1000倍以上低い濃度で感じるようになっています。それはなぜでしょうか?苦味は毒物が持っている場合が多いと言われています。そのため体が自己防衛のためにわずかな濃度で苦味を感じ、危険信号をだしているのです。






Q.2 コーヒーやビール。もともと「苦味」は人が好んで摂取する味ではありません。けれども、コーヒーやビールは好んで飲まれます。これはコーヒーやビールに含まれる成分が、人に気持ちの良さを与え、そのことを学習するからと言われています。またある時に、コーヒーやビールを飲むと苦みがあまり感じられないと言われています。それはどんな時でしょうか?



①忙しいとき 
②悲しいとき 
③疲れているとき 
④楽しいとき




正解③

解説  
同じ苦さの物を作業の前と後に食べてもらうと、後に食べた方が同じ苦味なのに、苦く感じないというデータがでています。これはストレスをかけると唾液の中にリン脂質という物質が増えることによります。リン脂質は味をマイルドに感じさせる働きがあるのです。





Q.3 五つの基本味は塩味、酸味、苦味、甘味、うま味と言われています。「酸味」は、すぐに口に広がり、すぐに消えてします。それでは、塩味、苦味、甘味、うま味の中で一番舌に残ると言われている味はどれでしょうか。次の四つの中から選びなさい。


①塩味 
②苦味 
③甘味 
④うま味




正解④

解説  
どの味が残るかという実験は口に含んだとき、そしてそれを吐き出した時、その二つのプロセスで試験されます。その結果はうま味成分。メカニズムにはまだ謎が残りますが、舌の付け根にある受容体にうまみ成分が結合するとなかなか流れにくいことが原因の一つではないかと考えられています。





2015年2月1日日曜日

「きちんと学ぶ 味覚の基本 第2回 (全10回)」

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Q.1 食事をするとき、砂糖の量が多少多くても少なくても、人はあまり敏感ではありませんが、食塩の量に関して、人はかなり敏感です。これは体に対しての砂糖と食塩のある特徴のためと言われています。それはどのような特徴でしょうか。


①砂糖は吸収しやすいが、塩分は吸収しにくいため。
②砂糖は多く摂取しても構わないが、塩分は多く摂取すると体に害があるため。
③砂糖は体に蓄えることができるが、塩分は体に蓄えることができないため。
④砂糖は体で生み出すことができるが、塩分を生み出す事はできないため。






正解③

解説 
砂糖はある程度体内に蓄積ができる物質です。けれども塩分は蓄積することができないためある一定量を定期的に摂らなくてはいけません。その一定量を味覚によってはかるため、体が必要とする塩分濃度0.9%以下だと、味が薄く感じ、0.9%以上だと塩辛く感じるのです。




Q.2 非常に酸っぱい物を食べるとき、人は口をすぼめてとがらせます。この反応の理由はなんでしょうか?

①体が酸の刺激に、瞬間的に拒否反応をしめすから。
②体が唾液を分泌させ、酸を中和しようとするから。
③体が酸に反応をし、神経が興奮するから。
④体が酸の刺激に、驚き、筋肉を硬直させるから。




正解②

解説 
酸っぱい物を食べた時には、顔の筋肉が収縮をし、独特の表情となります。この動きは口の中に唾液だまりをつくり、その事によって酸を中和させる働きも促します。




Q.3 昔の夏みかんはとても酸っぱい時代がありました。この夏みかんの酸っぱさを中和させるためにある物をかけて食べていたのですが、このある物はなんでしょうか。 

   

①重曹
②砂糖
③塩
④醤油





























正解①

解説 
重曹に含まれる重炭酸イオンが、酸味のもとである水素イオンを中和するから。砂糖をかける場合もありますが、これは中和させて酸っぱさを変化させている訳ではありません。甘みを感じ、酸味が消えたように錯覚しているだけと言えます。